少し前に中国新聞に載った「広島県立美術館、学芸員が展示監視も」のニュースについて。
一部で話題にもなったのだが・・・
個人的にはそもそも県立美術館は利益を追求する場所ではない、と思っている。私は広島県生まれの広島県育ちだが、支払った県税が美術館の運営に使われるのなら全く文句はない。(それよりも誰もいない田舎に立派すぎる道路を造るのに税金を使うのをやめてほしい)
とは言っても、赤字の展覧会っていうのは時勢や多くの人の需要に合っていないのか?ということにもなるのかと思う。
であれば、経費削減よりも魅力ある美術館運営や集客に力を入れる方が重要だろう。
では、広島県立美術館はお役所仕事でそういう努力をしていないのか?
私は最近の美術館は頑張っていると思う。
そもそも中国新聞もこういう記事も載せるのなら、広島県立美術館が美術館運営や集客のためのさまざまな努力をしていることも同時に載せるべきだと強く思う。
恒例となりつつあるWebレポーターもその一つで、他では聞いたことのないイベントだ。
昨年リニューアルされた広島県立美術館のホームページには学芸員や美術館スタッフによる公式ブログがあり、美術館の裏話やイベントが楽しく紹介されており、参加してみたいな、という気を起こさせる。
また最近は所蔵作品展で一部の作品の写真撮影が許されるようになっていたり、所蔵作品の情報や画像を検索できる「館蔵品検索」がホームページからできるようになっている。
私は芸術作品の著作権について全くの素人だが、あれだけの数の所蔵作品の情報の整備や著作権の調整がどれほど大変なことか、素人の私でも想像がつくのだから、報道機関ならなおさらよく分かるだろう。
撮影が許されている作品もほんの少しというわけではなく、有名な作家の作品も数多く撮影できるようになっているのには驚く。館蔵品検索では美術館が所蔵する4000点以上の全作品の情報が公開されている。広島県立美術館の所蔵作品数は近隣の県と比較しても群を抜いて多いのだ。
美術館で行われるイベントや、学芸員による出張講座にしてもとても魅力的で、どれもやってみたいと思えるものだ。
そういえば「広島県立美術館パートナーズクラブ」という近隣の飲食店などとコラボレーションした企画も12月からはじまっているらしい。
こうした試みと情報公開は広島県立美術館の、少しでも魅力ある美術館を目指しての挑戦のように思える。
私は、美術館の挑戦を応援したいし、そういう美術館であることを広島県民のひとりとして誇りにも思う。
個人的には年間パスポートなんかがあったり、前売り券が携帯やネットで購入できるともっと嬉しい。個人情報を管理するようになるとすると大変にはなるのだが、その分展覧会に来た人の傾向や情報が分析できるようになり、今後の展示企画には役立つだろう。
鑑賞も自分の携帯電話やタブレット端末で作品解説を読みながらできるとありがたい。これはハードルが高いことだと思うが、実際に国立西洋美術館や東京国立博物館の法隆寺宝物殿などではそういうことができると聞く。こちらも閲覧者の傾向などを分析するのには役立つ情報になる。
著作権が整理された作品情報や画像は、ぜひ広島の子供達の教育現場でも活用してもらいたい。
県は美術館の集客を美術館任せにするのでなく、観光面や教育委員会との密な連携や協力・支援もするべきだろう。
いずれにしても、こうした新しい試みは一朝一夕に効果が現れるものではなく、美術館には今後もどんどん魅力的な挑戦を期待しているし、見守っていきたいと思う。